株式会社アトックス
 

日本アイソトープ協会発行の学術論文誌「RADIOISOTOPES」に当社社員の論文が掲載

公益社団法人日本アイソトープ協会は、アイソトープ・放射線に関する利用技術の向上と放射線安全の確保を目的とした社団法人です。同社団法人が発行する学術論文誌「RADIOISOTOPES」には1952年の創刊以来、アイソトープの利用や、その基礎となる様々な研究が掲載されています。
この度、ベルギーのIRE ELiT 社製68Ge/68Gaジェネレータ「Galli Eo®」を使用する際の放射線管理上の安全性を評価した論文(2022年71巻1号)が「RADIOISOTOPES」に掲載されましたので、お知らせします。
本論文は「核医学」で採択された68Ge/68Gaジェネレータの長期間の品質検査, 58巻1号(2021 年)」に引き続き、当社が発表した68Ge/68Ga ジェネレータに関する2報目の論文となります。本研究は当社と国立大学法人 北海道大学との共同研究によって実施され、北海道大学アイソトープ総合センター 久下教授の指導の下で行われました。

【論文の概要】

技術報告:68Ge/68Gaジェネレータの長期間にわたる放射線管理上の安全性評価

68Ge/68Gaジェネレータ「Galli Eo®」はサイクロトロンを用いずに放射性ガリウム(68Ga )を、手軽に取り出すことができる小型装置で、68Gaを用いた放射性の診断薬の合成に使用されます。68Ge/68Gaジェネレータは有効期限が12ヵ月と長く、溶出可能な回数も450回と多いことから、長期間使用することが可能です。一方で、長期間の使用は、使用者の被ばくやジェネレータの経時的劣化による放射性物質の飛散や周辺の汚染の懸念がありました。
本論文で評価した68Ge/68Gaジェネレータ本体から放出される放射線は、法令の基準を満たしており、実際に使用した場合の使用者の被ばく線量は、1溶出あたり≦5 μSvと低いことが確認されました。また、有効期限12か月を超える15か月の評価期間において、68Ge/68Ga ジェネレータからの意図しない放射性物質の漏洩は確認されませんでした。これらの結果より、68Ge/68Gaジェネレータの放射線管理上の安全性が確認されました。

【アトックスの取り組み】

前立腺がんは、我が国で急速に罹患数が増加しているがんの一つです。前立腺がんはCT、MRI、骨シンチグラフィーなど、画像診断を用いて検査されますが、リンパ節の評価においては、CTやMRIは感度、特異度ともに十分ではないとされており、より精度の高い診断法が望まれていました。
近年、これらの前立腺がん検出法を凌駕する画像診断技術として、68Ga-PSMA PET※1に関する研究開発が欧米を中心に進められています。既に多数の臨床研究が実施され、68Ga-PSMA PETは原発巣の広がりを正確に把握することによる検査時の負荷軽減や、適切なステージング(がん進行度)による的確な治療介入に有用であることが報告されており、我が国においても68Ga-PSMA PETの導入が期待されています。
当社は68Ga-PSMA PETの導入に備え、2018年からベルギーのIRE ELiT社からGMP (Good Manufacturing Practice)グレードの68Ge/68Gaジェネレータ「Galli Eo®」の輸入販売を行っております。また、68Ga-PSMA PETの日常的な臨床利用を可能にするため、北海道大学と共同研究契約を結び、68Ge/68Ga ジェネレータと自動合成装置を組み合わせた68Ga-PSMA PET実現に向けた取り組みを行っています。

※1 68Ga-PSMA PET
 68Ga-PSMAは前立腺がん組織に多数発現する、前立腺特異的膜抗原(Prostate Specific Membrane Antigen)に結合する放射性標識化合物です。68Ga-PSMAを患者様に投与し、PETカメラで検査することで、転移の有無を画像化することができます。

ジェネレータ
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