東京大学と株式会社アトックスが社会連携講座「放射線応用技術のイノベーション」を開設
――散乱線の物理現象解明による社会インフラ診断技術の開発を推進――
このたび、国立大学法人東京大学大学院工学系研究科(研究科長:加藤 泰浩、以下 東京大学)と株式会社アトックス(代表取締役社長:矢口 敏和、以下 アトックス)は、「放射線応用技術のイノベーション」に関する社会連携講座※1を2026年1月1日に開設いたしましたのでお知らせします。
■本社会連携講座開設の目的
放射線は物質を透過する能力があり、医療、農業、工業など幅広い分野で利用されています。特に工業分野では、製品の内部欠陥の検査などで古くから利用されてきました。近年では高度成長期に整備された社会インフラの老朽化が社会問題となっており、健全性確認のための診断方法として、X線を用いて内部構造を可視化する検査技術の開発も進んでいます。しかしX線が検査対象物を透過する際に発生する散乱線※2の影響により、画質と検査精度が低下するという問題があります。特にコンクリートはセメント、水、骨材から構成された複合材であり、透過するコンクリートの厚さが増すほど散乱線の影響はより顕著なものとなり、検査精度の低下を招きます。
本講座では、X線が物質を透過する際に発生する散乱線の物理現象について、実験により得られた透過画像に対しシミュレーションをはじめとする数理手法を用いた画像構成を検討し、透過画像の画質向上に寄与する技術の確立を目指します。
さらに放射線利用と応用の研究により放射線応用技術のイノベーションを進め、放射線を安全に活用できる技術の開発と人材育成に努めます。
※1 社会連携講座:公共性の高い共通の課題について、共同して研究を実施しようとする民間等外部の機関(国立研究開発法人を除く)の経費等を活用して、学部や研究科などの教育研究を行う機関に設置される講座。
※2 散乱線:X線が物質に照射された際に物質内部の原子や分子に衝突し、進行方向が変わる物理現象で、散乱線が透過画像に混入すると画像のコントラストが低下し、診断精度に影響を与える。医療分野では診断精度向上を目的とした散乱線除去技術の研究が進められている。
■社会連携講座の概要
| 講座名称 | 放射線応用技術のイノベーション |
|---|---|
| 研究目的 | 高エネルギーX 線は物質中を深くまで浸透するが、一方散乱などの物理現象により、その軌跡はランダム性を含んだものになる。そこで本講座では、実験により得られる透過画像に対してシミュレーションをはじめとする数理手法を用いることで、その画像構成を検討し、現実との対比を可能とすることを研究の目的とする。 |
| 研究内容 | 高エネルギーX 線は光でありながら、粒子的な性質を色濃く帯びていることから、物質中を進行するにつれて散乱をはじめとして様々な物理現象により、その進行方向が変化していく。これらはX 線エネルギーや物質にも依存していることから、物質と透過X 線の関係は透過距離が大きくなるに従って複雑なものとなる。これらの物理現象に対してシミュレーションを援用することで、実験により得られる透過画像を理解し、物質の構成を推測するために必要となる情報を抽出する手段を研究する。 |
| 研究担当教員 | 長谷川 秀一(東京大学大学院工学系研究科原子力専攻教授)※研究統括 長井 超慧(東京大学大学院工学系研究科附属人工物工学研究センター准教授) |
| 設置期間 | 2026年1月1日 ~ 2028年12月31日(3年間) |

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