株式会社アトックス
 

【アトックス事業開発部】日本原子力学会2022年春の大会で「MCCCE法を用いたリチウム-7濃縮技術開発」を発表

Li-7濃縮技術開発は、資源エネルギー庁の補助事業として令和元年度に採択され、フィージビリティースタディーとして進めてきております。現在、PWRの一次冷却系のPH調整用7LiOHをほぼ100%ロシアからの輸入に依存しております。これは、安全保障上の問題として関係者からも注目されているところです。この技術開発を進めるために、アトックスはプロジェクト全体の取り纏めを行い、大阪大学を中核機関とした5機関が参加したコンソーシアムで進めてきております。
3/16~18に開催された日本原子力学会春の年会において、本「MCCCE法を用いたリチウム-7濃縮技術開発」、副題として(1)開発の概要、(2)濃縮試験の状況、(3)流動数値シミュレーションの3件をシリーズして発表いたしました(資料1参照)。(1)についてはアトックス(事業開発部福森さん発表)、(2)については大阪大学、(3)についてはJAEAから、それぞれ発表しました。
今回の原子力学会はオンライン開催のため議論が難い状況でありましたが、聴衆者からは要点をついた質問が出された。
注)MCCCE法:Multi-Channel Counter Current Electrophoresis法(マルチチャンネル向流電気泳動法)

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日本原子力学会 2022年春の年会

会期:2022年3月16日(水)-3月18日(金) ***オンライン開催***

一般セッション
V.核燃料サイクルと材料 » 550044--11 同位体分離,同位体応用,ウラン濃縮
[3I08-12] 同位体濃縮・質量分析

2022年3月18日(金) 14:45 〜 16:15 I会場
座長:長谷川秀一 (東京大学)

[3I09] MCCCE法を用いたリチウム-7濃縮技術開発

(1) 開発の概要
発表者 福森麻衣・竹村友紀・長谷川信(株式会社アトックス)、綱田宜司・田中健哉・(株式会社ペスコ)、
    岸本忠史(大阪大学)

PWR一次系冷却水のpH調整は、LiOHを用いて行なわれている。Liは天然にLi-6とLi-7の同位体が存在するが、Li-6は中性子吸収剤であるため、被ばく管理の観点からできる限りLi-7を濃縮する必要がある。現在、Li-7の供給はロシアの独占状態であり、日本もロシアからの輸入に依存している。しかしながら、これは安全保障上の課題となる。また、ロシアが採用している水銀を扱う水銀アマルガム法は、環境面からも課題となる。これらのリスクを回避するためには、安全保障面及び環境面を考慮した新たな国内供給体制の構築が必要となる。本研究では、既往法に代わる新たな濃縮技術としてマルチチャネル向流電気泳動(MCCCE)法に着目した。MCCCE法は電気泳動のキャピラリー法と向流法を組み合わせた手法で、電気泳動により物質を移動させる一方、向流する溶液で目的同位体を濃縮する方法である。本報告では、MCCCE法によるLi-7濃縮開発の概要について報告する。

[3I10] MCCCE法を用いたリチウム-7濃縮技術開発

(2) 濃縮試験の状況
発表者 岸本忠史・松岡健次・福本敬夫(大阪大学)、小川泉(福井大学)、白石啓宜・川上智彦(株式会社化研)、
    福森麻衣、竹村友紀、長谷川信(株式会社アトックス)、塚原剛彦(東京工業大学)

MCCCE法は電気泳動法を基礎に、向流法とキャプラリー法の利点を組み合わせた濃縮法である。水溶液中のイオンを電場で移動させる一方で、逆方向の速度を水の流れ(向流)で与え、ほぼ釣り合う状態を作ることで泳動距離を稼ぎ濃縮を達成する。これまでの向流法に比較して電場(電圧)を高くすることで、装置はコンパクトになる。高い電圧はジュール熱の有効な除熱で使用可能になる。これはBN(窒化ホウ素)で泳動路を作ることで実現した。BNは高い熱伝導率をもつ絶縁物という相反する性質をもつ稀な素材である。この装置を用いて濃縮7Liの製造に向けた基礎実験を進めている。最初に分離能として3%の実験結果が得られ、向流等を調整することで、5%への向上が達成できた。現在進めている実験の詳細と将来に向けての装置の改良計画について概説する。 [3I11] MCCCE法を用いたリチウム-7濃縮技術開発

(2) 単チャンネル試験による脈動流の評価と数値シミュレーション 
発表者 堀口直樹・吉田啓之・北辻章浩(JAEA)、福森麻衣・竹村友紀・長谷川信(株式会社アトックス)、
    岸本忠史(大阪大学)

軽水炉冷却材の水質管理において、安全保障や環境問題を考慮したLi-7濃縮技術の開発が重要である。これらの面で革新的なマルチチャンネル向流電気泳動(MCCCE)法を実用化するためには、流路内のイオン挙動を把握する必要がある。本報では、濃縮実験装置の一部である単一チャンネルに着目して、内部のイオン挙動の把握を目的とした流動試験と、数値シミュレーションを実施した結果を述べる。模擬流体として水を用い、ポンプにより脈動を与えた流動試験により、流路内にポンプの駆動周波数よりも高周波の脈動が生じることを確認した。また、CFD手法をもとに、電場が付与されたイオンの運動を、相当する付加速度が加えられる微粒子として追跡する、イオン挙動数値シミュレーション手法を構築した。試験で取得した脈動のデータを入口条件に設定し、脈動流中を移動するイオン挙動を再現した。

発表
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