株式会社アトックス
 

【事業開発部】日本原子力学会2023春の年会で「MCCCE法を用いたリチウム-7濃縮技術開発」の最新状況を発表

Li-7濃縮技術開発は、資源エネルギー庁の補助事業として、令和元年度からフィージビリティースタディーとして進めております。現在、PWR一次冷却水のpH調整用の7LiOHは、ほぼ100%ロシアから輸入されており、国の安全保障上の課題となっております。開発の体制としては、アトックスが開発の全体調整を担い、大阪大学が開発の中核機関となった全9機関のコンソーシアムで進めております。
3/13~15に東京大学駒場キャンパスで開催された日本原子力学会2023年春の年会で、主題を「MCCCE法を用いたリチウム-7濃縮技術開発」とし、昨年度発表の1)~3)に引き続き、4)最新の開発概要、5)平板型濃縮装置によるLi-7濃縮実験の概要、6)平板型流路内の数値シミュレーション の3件をシリーズ発表しました。4)についてはアトックス(事業開発部 福森さん)、5)については大阪大学、6)については国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)が、それぞれ発表しました。
今回の原子力学会の年会は、久々の対面開催となったこともあり、活発な議論が行われ、大変有益な情報を得ることができました。
注)MCCCE法:Multi-Channel Counter Current Electrophoresis法(マルチチャンネル向流電気泳動法)

事業開発部 福森さんの発表

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日本原子力学会 2023年春の年会

会期:2023年3月13日(月)~3月15日(水)
場所:東京大学駒場キャンパス

一般セッション
Ⅴ.核燃料と材料≫504-1 同位体分離、同位体応用、ウラン濃縮
[1H01-05]同位体分離

2023年3月13日 10:30~11:55 H会場
座長:長谷川秀一(東京大学)

[1H01]MCCCE法を用いたリチウム-7濃縮技術開発

(4)最新の開発概要
発表者: 福森麻衣・山田楓・長谷川信(株式会社アトックス),綱田宜司・田中健哉(株式会社ペスコ),
岸本忠史(大阪大学)

PWRの一次系冷却水のpH調整はLiOHで行なわれているが、被ばく管理の観点からLi-6を除き可能な限りLi-7を濃縮したLiOHが必要である。
現在、Li-7の供給はロシアの独占状態であり、日本もロシアからの輸入に依存しているが、ウクライナの問題もあり、日本の安全保障面で課題となる。また、ロシアの濃縮法は水銀を扱う水銀アマルガム法であるため、環境面の課題もある。これらのリスクを回避するためには、安全保障面及び環境面を考慮した新たな国内供給体制の構築が必要となる。
本研究では、既往法に代わる新たな濃縮技術としてマルチチャネル向流電気泳動(MCCCE)法に着目した。MCCCE法は電気泳動キャピラリー法と向流法の組合せにより、水銀を用いず目的同位体を濃縮できる方法である。
本報告では、第1報に続いて、海外の動向を含めてMCCCE法によるLi-7濃縮技術開発の最新の開発状況について報告する。

[1H02]MCCCE法を用いたリチウム-7濃縮技術開発

(5)平板型濃縮装置によるLi-7濃縮実験の概要
発表者: 岸本忠史・松岡健次・福本敬夫(大阪大学)、小川泉(福井大学)、硲隆太(大阪産業大学)、
長谷川信・福森麻衣(株式会社アトックス),白石敬宣・川上智彦(株式会社化研)、
塚原剛彦(東京工業大学)

MCCCE法は電気泳動に向流を組み合わせ、ジュール熱の除熱効率を絶縁物かつ熱伝導率の高い物質(BN)で高めることで効率を上げる濃縮装置である。この方法でLi-7の濃縮の研究を進めている。今まで円筒型の泳動路で開発研究を進めて来たが、より効率が高く、カスケード装置への発展を見込んで平板型の装置の開発を進めている。その現状を紹介する。

[1H03] MCCCE法を用いたリチウム-7濃縮技術開発

(6) 電場分布を考慮した模擬平板型流路内の数値シミュレーション
発表者: 堀口直樹・吉田啓之・北辻章浩(JAEA)、福森麻衣・長谷川信(株式会社アトックス)、
岸本忠史(大阪大学)

PWRの水質管理には、Li-7が濃縮されたpH調整剤が不可欠である。ここで必要なLi-7濃縮技術として、マルチチャンネル向流電気泳動(MCCCE)法を開発している。本研究では、濃縮実験におけるイオン挙動を把握するため、商用ソフトウェアを用いて取得した電場と、TPFIT-LPTを用いて取得した流れ場の3次元データを元に、長時間のイオン挙動をシミュレーションする手法を開発している。今回、実験流路を簡易化した平板型流路の内のイオン挙動に本手法を適用した結果を報告する。得られた結果から評価したLi-7とLi-6の模擬イオンの分離係数は濃縮実験と同程度の値であり、本手法の妥当性を確認した。

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